EU(欧州連合)が合意した「財政規律強化策」は現時点ではなんの
役にもたたない。火事がすでに燃え盛っている状態の中で「皆様
火事にならないように消化器を備えましょう」ではまったく意味を
なし得ません。
ギリシャはすでに手を付けられないくらい燃え盛り、その火はポルト
ガル、スペイン、イタリアにも燃え移っている状態なのに、首脳会議
では消火についての適格な答えが示されていません。
この緊急事態になぜ欧州中央銀行(ECB)が国債危機に見舞われてい
る国々に無制限に資金を供与しないのか、私には理解できません。
欧州を一つの国とするならばEUは中央政府です。ギリシャは一地方
都市に過ぎない。北海道の夕張市が破綻したら日本の政府が助けたよ
うにギリシャが破綻すればEUが助けるのが当然です。
助けるということは資金援助をするということです。通貨を統一した
ということは自国でユーロを印刷できない。印刷できるのは欧州中央
銀行だけです。夕張市がお金を刷れないようにギリシャもお金を刷る
事はできません。
10月の首脳会議で欧州金融安定化基金で約103兆円に拡大するという
合意を断念して、なぜIMFに財政悪化国への資金支援を求めるのか?
しかも助けを求めるためにIMFにわざわざ2000億ユーロを融資する
などまったく理解できない。
もちろん欧州中央銀行が資金援助をすれば破綻国は、甘えて財政規律
をしないかもしれない。IMFなら厳しい取立てだけでなく緊急援助を
受ける条件として抜本的な自己改革を命じこれらの国の構造を根底から
変えることができるとドイツやフランスの首脳は考えたと思われます。
つまりフランスやドイツは憎まれ役をIMFに押し付けてなるべく財政
危機の国からの非難や憎しみを避けようとする魂胆がみえます。
しかしユーロ圏の首脳たちはIMFが超国家組織の手足となって動いて
いることに気がついていない。アジア通貨危機の際のIMFの手口を
まったく勉強していません。
アジア通過危機の時、IMFとった緊急政策は完全に不適切であり、
その対策は逆効果となって危機はいっそう深刻化しました。
なぜそうなったか、それはIMFは投資家の債権回収しか頭になかった
からです。その結果インドネシアでは金融パニックを引き起こし、スハ
ルト大統領は失脚し、数千万人のインドネシア人が失業しました。
金融危機は,タイも激しく襲い、バンコク市の一部はゴースト・タウン
化し、大量の失業者が出ました。韓国では銀行や大企業が利益集団に
乗っ取られ、アメリカの経済植民地にされてしまいました。
これらの国に西欧諸国の利益集団がやってきて、金融システムを閉鎖し
国営企業を民営化し、銀行を売却し、海外の投資家が進出する際に
障害となる全てを排除するように命じました。
つまり利益集団が企業を安く買い取ることが出来るようにIMFが地なら
しをしたのです。
サルコジ大統領もメルケル首相もこのようなIMFの邪悪な手口をまるで
知らない。
ユーロ圏の首脳たちは、アジア金融危機を後進国の縁故資本主義のせい
でアジア各国政府の経済無知や経済の悪しき習慣のせいだと思っていま
す。自分たち白人は黄色人種とは違うと高みから見ていてまったく
勉強も分析もしなかった。
サルコジもメルケルもIMFにユーロ圏の経済を左右する重大な権限を
与えてしまったことにまもなく後悔するはずです。誰に対しても責任を
負う必要がないIMFや超国家企業に経済をコントロールする権限を
与えてしまった恐怖で彼らは震えだします。
超国家組織はEUだけでなく日本も狙っていますが、しかし日本はドル
を約100兆円持ち、外国からの借入もなく、逆に海外へ多額の資金を
貸し付け、莫大な国内貯蓄があり、国債を発行しても自国で消化できる
国に金融危機を起こす事は不可能です。
そこで超国家組織はTPPという仕掛けで、アメリカの基準を日本に
押しつけ、全ての規制を撤廃し、日本政府のいかなる行動にも妨害さ
れない完全な自由市場を作り上げて、日本の富を吸い上げるつもり
です。
彼らはヨーロッパもアジアもボーダレスの世界にして、世界を植民地
化することを目的としています。
今回のユーロの危機に対してアメリカは「欧州が解決すべき問題だ」
と突き放し、ユーロ圏に入っていないイギリスは財政統合に向けて
歩み始めたEU26カ国に対してイギリスだけが何故か反対しています。
イギリスの大手金融は、裏でアメリカと組んでいることは、ほぼ間違
いありません。ギリシャ国債を売り浴びせたヘッジファンド、各付け
会社、イギリス、アメリカ,等、これら危険なグループに世界は今だ
気がついていない
IMFや世界銀行が過去実施した処方箋や命令、活動がもたらした結果
についてサルコジやメルケルその他EU財政担当者は余りにも無知す
ぎます。
