私は中国から完全撤退してからすでに5年近くなりました。
昔IBO(大阪国際ビジネス振興協会)の総会で知りあい、その後中国
情報を交換していた社長さんから深刻な愚痴を聞かされました。
彼は優柔不断でもなければ中国情報が入ってないわけでもありません。
銀行借入で中国に投資したから設備の全てを置いて逃げる事が出来ない
のです。
自社の工場を中国に移転してしまったいじょう、中国の工場を捨てると
いうことは会社を解散することになります。
日本の本社が儲かっていたなら、中国での設備投資を全部捨てて、
ベトナムやインドに工場を移すことも考えられますが、本社はここ2年
赤字です。銀行が面倒を見てくれるなど100%ありえません。
つまり中国からの撤退は日本の本社を倒産さすことになります。中国
から撤退しなくても会社はいずれ倒産します。それならこのまま中国に
留まるほうが寿命を3~4年伸ばすことが出来るというのが彼の
考えです。
すなわち彼は会社が儲かっていた3~4年前にベトナムや、賃金の極端
に安いバングラデシュに移転すべきだったのです。いまさらどうしよう
もないが どうすればいいだろうという深刻な愚痴です。
私は愚痴は聞きますが相談は受け付けません。なぜなら相談されれば
答えやアドバイスを出さなければならなくなります。私は正しい答や
アドバイスなど持っていません。
私が撤退前も撤退後も中国のヤバイ情報は彼に伝えています。特に07年
に労働者の解雇を制限、終身雇用拡大など、その他労働者の権利拡大が
盛り込まれた「労働契約法」が成立した時点で彼に「撤退したほうが
いいですよ」と言った記憶があります。
現在、中国は2008年1月から施行された労働法体系変更の影響で、賃金
が急上昇しています。その上物価も高騰し、中国進出のうま味が消失
している状態です。
幸いにも彼の会社は特殊な技術を持っています。特殊な技術と言っても
オンリーワンではありません。彼の会社の常時の大口売り先は2軒で
残りは不定期だそうです。
会社の売り先もメーカーです。つまり彼の会社は下請けの下請けなの
です。売り先に中国工賃の上昇の説明をしても値上げに応じてくれない
という愚痴を延々と聞かされました。
2軒の売り先はそれぞれ違うものを作っていますが、彼の会社の部品を
必要としています。
彼の愚痴を聞いた後彼に「売り先に行って解散を宣言しなさい。その
場合遠慮気味に言うのでなく、語気を強めて『千円札を900円で売るつ
もりはない』とハッキリいえば値上げに応じてくれるかもしれませんが、
目的は値上げではありません。
目的は2軒の売り先とあなたの会社が共同出資してバングラデシュに工場
を作ることを提案してください。そうすれば値上げどころか現在の価格
より2割は下げることが出来ると提案すれば必ず乗ってきます。
この話は去年の10月頃の話です。あれからちょうど1年彼が真っ黒に
日焼けしてやって来ました。すでにバングラデシュの工場は今年の8月
から動いています。
私はバングラデシュに行ったこともありませんが情報だけは集めていま
した。私が当てずっぽに言った2割ダウンも来年から実行出来るそうです。
バングラデシュは世界最貧国で約2000万の若者が失業状態にあり半分
以上の国民が貧困の中で暮らしています。
私が彼に言ったのは「バングラ最大の都市である首都ダッカは避けるべき
です。治安が悪くて危険です。工場は地方に持っていった方が良いですよ、
それと現地の情報は日本大使館では役に立たないうえに不親切です、
それよりダッカにあるジェトロに相談したほうが適確です」とだけ言い
ました。
そして彼が工場建設途上で日本に帰ってきた時に聞いた話です。工場は
チッタゴンというところで、輸出入ができる港があり、ダッカに比べれば
清潔で美しい街だそうです。
彼が帰るとき「いくら安く雇えるからと言っても、バングラデシュ政府
が決めた最低賃金だけは、守ってください、後から進出する日本工場の
お手本になってください」と言いました。
そして偶然にも今年の11月にハシナ・バングラデシュ首相(女性)が
来日して、鉄道,橋梁、港湾施設の開発、地下鉄等の様々のインフラ
プロジェクトを提案して帰られました。
中国で悲惨な目にあっている中小企業の社長様一日も早く中国から
脱出してください。
アジアは広いです。まともな人間が住んでいるところに投資しましょう。
