最近のアメリカは、中国幻想にとらわれて、中国の術中にはまっている
ように感じているのは私の誤解でしょうか?
何もアメリカだけではない、日本はもちろんのこと世界中の国々が中国の
術中に陥っているように感じられます。
国際社会の秩序は決められたシステムの中で対応するように出来ています。
ところが中国だけが強大な軍事力をバックに自国の利益に対して貪欲に行動
しても咎める国すらありません。
その中国のルール無視、マナー違反を咎めることの出来る唯一のアメリカが、
中国に遠慮して、宥和的な政策を過去繰り返してきました。
もちろん現在のルールは西欧人の価値観に基づいたルールですが、しかし
中国が世界の舞台に登場してきた30数年前にはすでに定着していた国際
システムなのです。
世界はこのシステムに従って国際経済なり国際政治が運営されて来たのです。
ところが中国は18世紀の満州族が建てた清朝時代の皇帝が支配するルールで
自分勝手に行動しています。
つまり中国は冊封体制の下で東アジアの覇権を握り、古びた中華思想で
国際秩序を維持しょうとしています。最近ではアフリカ、中央アジア、南米に
まで手を伸ばし、小国は中国軍事力の恐怖と中国資金に目が眩み、結果支配
されていっています。
アメリカは中国に対しての油断、楽観主義が世界を暗黒の世界にしていく
ことに気がつかなければいけません。
アメリカの責任は大きいです。アメリカは常に中国に対して世界のシステム
における責任あるステイクホルダーになれと呼びかけ、また遠からずそう
なることを信じています。
アメリカは中国における経済の自由化が政治の自由化につながり、そして国民
が豊かになることによって自然的に価値観を共有できる国際社会の一員に
なっていくと愚かにもひたすら信じています。
アメリカはどこの国であれ「経済が大きくなれば必ず政治的変化が起こり
民主主義へとなっていく」と信じたがっています。
それではなぜアメリカはこのような脳天気で無知な国になってしまったのか?
アメリカの思考の根底には戦後の韓国、台湾がイメージされていると思われ
ます。戦後この二つの国は権威主義体制下に置かれ、警察と公安当局が
反対制勢力を力で抑えこんでいました。
ところが経済成長が急速に進むと、この両国は豊かになり民主国家へと
変貌していきました。だから当然中国でも同じように民主国家になっていく
とアメリカは信じたのです。
この両国の民主化の要因をアメリカの指導と、支援・援助が重要な役割を
果たしたことは当然ですが、肝心の日本の戦前・戦後の影響力を完全に
忘れています。
はっきりいってアメリカの指導者たちはアジアの歴史をあまり勉強して
いません。
韓国・台湾が戦後急速に豊かになり民主国家になっていったのは戦前の
日本における善なる支配と戦後の技術援助・経済援助の結果だということが
アメリカは全く分かっていません。
私がいつも思うのはアメリカのシンクタンクの研究者、中国専門学者や
マスコミの面々のレベルの低さにはため息が出ます。
台湾や韓国は戦前日本が統治したことによって豊かになりすでに民主国家
になっていたのです。
ところが日本の敗戦により台湾は蒋介石のものになったのです。蒋介石独裁
のファシズム政党はすでに民主国家になっている台湾の私企業、私有財産、
全耕地の30%,山林の90%,7つの銀行の本支店の預金,各地の在庫の米など
全資産の8割ともいわれる莫大な資産全てを蒋介石がぶんどったのです。
戦後台湾が民主国家になったのはアメリカの関与だけでなく単に戦前に
戻ったに過ぎないのです。
韓国も全く同じです。韓国の評論家であるキム・ワンソブ氏は『親日派の
ための弁明』という著書の中で「朝鮮の近代化は日本の統治・支援なくして
ありえない」と言っています。韓国も戦前はすでに豊かな民主国家になって
いたのです。
アメリカの中国専門家,シンクタンク,議員,議員スタッフの人たちが相変
わらず「韓国や台湾に民主主義が浸透していったように中国でも民主化が
生じるだろう」という愚かな議論しか出来ないのは、アジアの歴史を全く
勉強していないからです。
6月29日に産経新聞が開催した、日本,米国,インド,中国の専門家を招いた
国際シンポジウムの対談が載っています。「米国には米中関係の将来への
楽観主義が広がっている。2百年以上前からの中国文化への深い憧憬の念を
指摘する歴史家もいる」
このようなピルズベリー(米国防総省顧問)の発言で相変わらずアメリカの
浅はかな中国観が見えました。
「中国の急激な経済成長の行く手には大規模な政治改革が待っている」と
信じているアメリカ知識人たちの安易な思い込みには,絶望すら感じます。
