経済を通じて会計学の重要性を書いてみたいとおもいます。
多くの評論家が中国の未来について繁栄論と悲観論に分かれて論じていますが、
双方の評論家が見逃している最大の欠陥は中国会計について全く関知していない
ということです。
私は常々中国の最大の欠陥は社会ソフトがおろそかにされている事だと
言ってきました。会計学もその中の重要な項目です。
社会主義国家である中国は市場経済を導入して、過去30年間急速に経済発展を
しました。中国は2009年ドイツを抜き世界最大の輸出国、自動車生産販売量は
アメリカを抜き世界一になりました。
このような状況を見て、エコノミストやマスコミは「日本ダメ論」を吹聴
しています。
今日は中国のこのような経済的な脅威論を物や数字で論破するのでなく、
社会ソフトの中の一つである「会計学」を無視して発展した中国の危うい
危弱性について考察してみます。
過去著名な経済学者や評論家たちは資本主義経済において不可欠である
会計学の重要性をわかっていません。
中国の会計学は現金主義で世界標準の複式簿記を採用していません。
知らない人は何が問題か分からないと思います。
中国式の会計学なら企業の利益を把握することは不可能です。ということは
国を経営していくための税を公平に徴収することができません。
税を徴収するだけでなく正確な損益がわからなければ企業の将来も見えません。
つまり中国において外資系の企業は別にして中国法人の経営者は自社の中身を
全く知らないということになります。
中国の場合、大企業といっても屋台を引っ張って商売をしているラーメン屋
と同じだということです。すべての経費を引いた後に残った現金が利益だと
いう捉え方しかしていません。
資本主義における国際会計は複式簿記を採用しています。この会計の優れた
処は会計知識の所有者ならば、すぐに理解できる会計になり、最も重要な
説明責任を果たしています。
中国会計だと経理マンは社長に説明ができません。経理マンの能力とは、
税務署との交渉能力だけが問われます。税務署の役人も会計学の知識が
ほとんどありません。
もちろん中国にも企業の会計学として「企業会計準則」という本が有り
経理マンは建前的には勉強をしますが、結局従来通りの大福帳で処理して
います。
中国の経理は税務署が企業などに番号入りの空白の領収書を発行して渡します。
それぞれの領収書は3枚1セットで、取引先と自社控えと残りの1枚は税務署に
提出します。つまり領収書を中心にして税務署は企業の収入全体を把握しています。
これだと企業が支払いを受ける際に,所管の税務署が発行したものでない
「偽の領収書」を使用すれば、収入をごまかす脱税が簡単にできます。
はっきりいうなら日本の江戸時代の大福張より数段劣っています。江戸時代
の大福帳はソロバン使用に適した独自の帳簿システムが確立していました。
中国会計学の話を長々とすると退屈するのでこのへんでやめますが,私が
言いたかったことは、近代資本主義の特徴は複式簿記を土台として営まれる
合理的な産業経営にあるということです。
日本が繁栄した理由はいろいろ有りますが,その中でも1873年に福沢諭吉
がアメリカの簿記教科書を翻訳して,いちはやく複式簿記を導入したことが
アジアで突出して発展した理由の一つだと思います。
日本が併合した韓国も統治した台湾も日本は近代的会社経営の複式簿記を
強制したことが今日の両国の発展につながったと一つだと思われます。
国が発展する要素は,近代科学,市場機構,近代法体系と複式簿記の4つが
あることだと断言できます。韓国や台湾の発展もこれらの4つのことを
日本が指導したことによって両国は近代国家になれました。
多くの学者は発展の基礎として、科学,市場機構,法体系などを語りますが
肝心な近代会計学である複式簿記について誰も感知していません。
そこで中国について見ますと,科学はパクリのイミテーション,市場機構は
未だ不十分、法体系は整えつつ有りますが国民が拝金主義で不道徳,私が
重要視する会計は大福帳、これで中国が未来永劫発展していくなど
どう考えても無理です。
中国繁栄論者が中国発表の数字を見て,中国が日本を追い越したとたわごとを
叫んでいますが,あと100年たっても追いつくことなどありえません。
例えば中国は携帯電話を年間6000万台輸出していますが、そのほとんどが
外国メーカーの現地工場製です。自動車の生産は年間約1,000万台、国内の
保有台数は2500万台を突破などの数字を見て中国の発展ぶりに仰天しますが
中国の主要な自動車メーカーはみな外資との合弁企業です。
つまり評論家は数に目がくらむあまりに、その内容をよく見ないから、中国が
追いついてきているように思うのです。
中国は資本主義の市場経済を導入しても, 国民を満足させる社会ソフトや企業を
発展させる基礎が何も構築されていません。
まさに空洞国家だと言えます。
今日は中国の弱点を会計学から眺めてみました。
