菅直人財務相が突然「増税による成長」を言い出しました。増税で社会保障
財源を確保して財政悪化に歯止めがかかれば、将来不安が払拭され個人消費
が活発化すると言っています。
まさに素人が偶然甲子園球場に出場して、ルールを熟知しないままいきなり
三塁に走るようなものです。
「増税による成長」など100%ありえない。経済が成長するということは、
GDP(国内総資産)の増加を意味します。それではGDPの大きさは何に
よってきまるか、「国民総需要」によって決まります。
昔読んだ経済の本に「国民総需要」のことを「有効需要」と書いてあり、
誤解したことがあります。有効需要と書くと、そのものを買うお金がある、
そういう需要だけだと思ってしまいます。これだと「投資」という考えが
抜けてしまいます。
つまりGDPの成長は、消費と投資からなります。投資とは機械を買ったり、
工場の建物を建てたりすることを投資といいます。株を買ったりする投資は
含まれません。
だから経済を成長さすためには「国民総需要」を増やせばいいのです。そう
すればGDPは押し上げられ、結果労働の需要は増え、失業は減ります。
国民総需要は消費プラス投資との合計です。
しかし消費は政府が命令しても、お願いしても財布にお金がなければ誰も
消費などしません。
菅直人財務相が主張するように「増税による税収を医療や介護などの社会
保障分野に投資すれば将来不安が払拭され個人消費が活発化する」と言って
いますが、医療や介護が充実して少し安心しても重税で苦しむ国民が消費に
向かうなど絶対にありえません。
すなわち需要を増やそうとすれば、投資を増やさなければいけません。
ここでもやっぱり「しかし」なんです。民間の設備投資を増やせといっても
景気が冷え、需要がないと誰も設備投資などしません。
鶏と卵の関係です。これはどうしても政府による設備投資にまたなければ
いけません。
だから日本政府は今まで国債を発行して道路やダムを作り続けてきました。
結果GDPを減らすこともなく、失業率も安定していたのです。これが
ケインズの経済学だったのです。
ここでもまた「しかし」が付きます。政府の設備投資である道路やダムは
国民総需要は増大し、GDPも押し上げますが、民間の設備投資のように
直接景気を浮揚させるような消費には結びつきません。
もちろん政府の投資による公共事業によって労働者の需要は増え、失業は
減り、消費を少しは押し上げます。
しかし税収の範囲で公共事業を進めるなら なんの問題もありませんが、
結局国債の発行にたよらざるをえません。国債すなわち借金です。
国の借金の主役は国債です。その国債の残高が、900兆円になんなんとして
いる。GDP比180%、個人レベルで考えれば異常である。だから、これ以上
の借金、とくに国債の増発は困るという意見も説得力があります。
日本のほとんどのエコノミストの口癖は「われわれは子孫のお金を使って
いる」と繰り返し警告しています。しかしわれわれの子孫のお金はまだ印刷
されていない。
そして最近の経済学者の言い分は、政府はその債務を完済できないだけでなく
利息も払えなくて破産してしまう、ギリシャの二の舞だといい始めています。
経済のプロたちが何故このような馬鹿げたことを言い出すのか、おそらく
この人たちの思考は国の債務を個人のレベルで考えています。個人ならば
膨大な借金で破産するのは当たり前のことです。
しかし最高権力を有する政府がその債務の自国通貨での支払いを公然と拒否
するなどという必要はありえない。必要なお金は簡単に印刷することが
できます。つまり日銀に国債を購入させればいいだけの話です。
だから日本の場合、円建ての債務で破産するなど100%存在しません。
この簡単なことが何故分からないのか?
日本国の円建て債務が経済的苦境の物差しでないということを経済学者たち
がまるで理解していないことにあきれてしまいます。
(この続きは次回にて)
