日々さまざまなニュースが飛び込んできます。そのニュースの裏側を常に
読み解く訓練をしておかなくてはいけません。たとえその推測が間違って
いてもいいから、ニュースを表面だけみて納得してはいけません。
昨日グーグルが中国から完全撤退というニュースを見ました。グーグルが
中国市場からの撤退を示唆してから既に2ヶ月以上が経過しています。
その間一時は残留という声も聞こえていました。撤退は中国という大きな
市場を失うだけでなく、700人の従業員の保証から、取引先から莫大な
損害賠償を求められる可能性までもあります。
それでも撤退せざるを得なかった理由は単に「中国政府の検閲やサイバー
攻撃に抗議」や「言論の自由の重視」などのきれいごととは思われません。
グーグルは2006年、中国でのサービスを開始する際、中国当局の求めに
応じて「人権関連サイトの非表示や検問を受け入れる」約束で事業を
開始しています。
それをいまさら「言論の自由に関する世界的な問題」であるなど、偽善の
臭いがプンプンしています。
中国インターネット上で「グーグルは米政府の操り人形だ」という声が
今回の本質を突いています。
結論から先に言いますと、中国はアメリカをなめ過ぎました。今後アメリカ
は中国との対決姿勢を徐々に強めていきます。
ここで少し過去にさかのぼってアメリカと中国の関係をおさらいしてみます。
当時ソ連との冷戦下、ベトナム戦争早期決着を旗印に大統領になったニクソンは、
北ベトナムへの最大の軍事援助国であった中国と親密な関係を築くために
キッシンジャーを秘密裏に中国に派遣しました。
そして1972年ニクソンが北京を訪問し毛沢東と会談、その後ジミー・カーター
政権下の1979年にアメリカと中国の間で国交が樹立されました。
キッシンジャーは1978年から事実上の中国の最高権力者である小平を
指導して資本主義経済である市場経済化に着手させます。
キッシンジャーの思惑は中国を資本主義開放経済への道を進めることに
よって中国が豊かになれば、一党独裁をすて民主化を実現して、やがて
近代化の仲間入りをすると信じていました。
そのためにアメリカ経済界の多くの工場を中国に誘導、世界中の工場も労働
工賃のあまりの安さに中国に殺到しました。
結果キッシンジャーの思惑通り中国は豊かになり大国になりました。
しかし中国においては経済の近代化や一部の国民の豊かさは発展を意味しない。
キッシンジャーの思いとは逆に一党独裁の中国共産党はますます強化され
肥大化していっています。
そのうえ自信をつけた中国は国際舞台で傲慢に振舞い軍拡を進めアメリカの
神経を逆撫でします。
最近までアメリカは中国から多くの利益を享受した経済界の圧力で協調姿勢
を堅持し「G2」まで言って中国を持ち上げてきました。
ところが中国へ進出したアメリカ企業は、力をつけてきた中国国営企業を優遇
し外国企業を差別する中国政府に懸念を感じ始めてきました。そのうえ中国政府は
法律を無視、変更を平気でする中国に不信感を抱き始めてきました。
経済面での対立が表面化し、陰険な様相を呈してアメリカは中国への制裁も
辞さない姿勢を見せ始めてきました。
米企業の圧力がなくなったアメリカ政府は、台湾への武器売却、ダライラマとの
面会など露骨に中国を刺激、とくに最近では人民元切り上げを求める米国と
拒否する中国の対立が激化してきました。
この歴史を踏まえた一連の流れの中でのグーグル中国撤退です。
両国の対決がここにいたって鮮明に浮き上がってきました。
つまり中国は「米国債の最大の保有国」「外貨準備高世界一」になり増長して
しまい、アメリカを見くびってしまったのです。
この中国のアメリカを見くびる構図は日本も戦前や戦後も経験しています。
戦前、世界の大国になったと錯覚した日本は無謀にもアメリカに戦いを挑み
国土を廃墟にされてしまいました。戦後も経済的に勃興した日本をアメリカ
に叩かれてきました。
日本経済に脅威を感じたアメリカは住友商事のセクハラ事件、新日鉄、NKK、
マツダなどがダンピングで血祭りにあげられ、ミノルタの特許侵害などで
、無実のいい掛かりをつけて巨額の賠償金を取られました。
最近では世界一になったトヨタ叩きです。
中国はアメリカを見くびりアメリカも中国を見くびっています。すなわち
アメリカは中国を応援し援助し、あるいは叩いても中国共産党は永遠に
変わることはありません。
中国が中国であるかぎり、このまま中国が本当に近代化し民主国家になる
ことは未来永劫ありえない。
たとえ中国経済が頓挫しても、特異な行動原理を持っている中国人が変わる
ことはありえません。
結局中国が存在していくには一党支配の共産国家を続けていかざるえ得ない
ということをアメリカも日本の政治家も知る必要があります。
(次回はアメリカを見くびり、危険な中国に近づいていっている無策な鳩山政権を
分析してみます。)
