前週は三回にわたって中国不道徳経済論をアマチュア経済学で考察して
みました。今日は日本の経済について私の単純思考で考えてみます。
日本の経済をネーミングすれば「悲観論的経済」と言ってもいいと思います。
現在の不況の最大の功労者は、悲観論が大好きなエコノミストたちです。
そのエコノミストの言葉をうのみにして報道するマスコミの論調が最大の
不況の原因です。
それでは不況について先週のような中国式でなく資本主義論で考えてみます。
経済学の本を見ますと「景気後退とは通常供給と需要のバランスが崩れた時」
と書いてあります。こんな文章を見るだけで先に進む意欲が無くなります。
つまり簡単に言えばお店で物が売れなくなったということです。物が売れな
ければ工場に注文が入りません。工場の売り上げが下がれば社員の人数や
ボーナスを削ります。すると人は節約して、ますます物が売れなくなります。
それでは景気が悪くなる前になぜ人々は物を買わなくなったか?日本を例に
あげて考えてみます。
それは貯蓄に走ったからです。なぜ貯蓄に走ったか?老後が心配になってきた
からです。それでは何故老後や先行きが心配になってきたか?
陳腐なエコノミストが不安を煽るからです。この20年間のエコノミストの
論調は暗いものばかりです。年金崩壊、財政破綻、医療崩壊、金融破綻、
円高などエコノミストの悲観論は際限なく現在も叫び続けています。
私は過去ブログで何回も日本経済の強さについて書いてきました。
今日はあらためて「日本人は未来を悲観する必要が全くない」ということを
書きたいと思います。
日本という国をアバウトで分析してみます。私は経済学者ではないので数字
を羅列して分析は出来ませんが、ビジネスマンの常識論で書いてみます。
まず高い教育水準、そして結果として読み書きと数字の高い能力、勤勉な
労働者、近代的な資本設備、優れた技術ノウハウ、非常に高い貯蓄率、
こうした特徴の結果として生じた人的・物的資源の蓄積が日本を経済大国
にしていったのです。このような要因はどの経済学者も表現の違いがあって
も必ず述べています。
しかし一番当たり前で重要な要素がぬけています。それは社会整備における
社会ソフトです。その中の一つに、日本政府は国民から税をきちんと徴収
することが出来るということです。
日本に住んでいるとこのような当たり前のことが、思考からすっかり抜けて
しまいます。先進国である欧米は別にして後進国では公平に税を徴収する
ことは100%不可能です。
国民から税をきちんと徴収できることが国の発展の最重要項目の一つです。
政府が企業から税をきちんと徴収するためには、企業は先進国がすべて採用
している複式簿記で損益計算書と貸借対照表を作成されなければ企業の損益
を把握することは出来ません。
しかし中国のように突然欧米の下請け産業として発展した国は会計学について
ほとんど無知に近い状況です。つまり中国のような後進国は現金主義会計です。
簡単に説明しますと、中国では、税務署が企業などに向け空白の領収書を
必要と思われる分量を発行します。領収書は3枚1セットで、支払いを受けた
場合には、金額を記入の上、取引相手に1枚を渡し、自社控えとして1枚を
保管。残り1枚は納税時に資料として税務署に提出します。
もちろん税務署は脱税を防ぐために、それぞれの領収書には税務署が番号を
記入しています。
しかし真面目に経理をしているのは外資系の会社で中国の会社の100%は
会計をごまかしています。手口は簡単で偽造領収書の作成です。
税務署の発行する領収書は決まった書式で税務署の印も押されているのに、
偽造領収書をどのようにして手に入れるのですか?と総経理(社長)に
聞いたことがあります。
すると総経理は「真正の領収書はいつでもどこでも手に入る。他の省では、
税務署員が売りに来る場合もある」と悪びれもなく言いました。
しかし各省の税務署が連携して、代金の支払い側・受け取り側の領収書の
すべてを照合すれば偽造領収書などすぐにわかりますと疑問をぶつけました。
総経理はあきれた顔で「そのような手間のかかる仕事をするなどありえない、
税務署の役人は賄賂が欲しくて企業に調査にくる、出すも物を出せば何の
問題も無い」と至極当然のごとくいいました。
結局中国においては、中国系の企業に対して期末監査を受けた企業などはない
ということです。
中国も早く国際基準の複式簿記を採用しないと企業から税を徴収するなど
いつまでたっても出来ません。国が発展するということはこのような社会の
基礎となる社会ソフトが完備されていないと結局 砂上の楼閣なのです。
私がこの重要性に気がついたのは、16年ほど前にモンゴルに行ったときです。
モンゴルとはビジネスの付き合いはありませんでしたが、たまたまUNIDO
(国際連合工業開発機関)からお誘いを受けてモンゴルの投資状況を視察に
行きました。
現地では先にUNIDOからの要請に応じて日本の公認会計士さんが来ており、
彼はモンゴル政府の要望で、複式簿記を教えに来ていたのです。
このとき初めて先進国では当たり前の社会ソフトが後進国では何も無い
ということを知りました。
中国のように見かけは経済発展をして近代国家になったように見えています
が、国民が安心して暮らしていけるような社会システムがほとんどいまだに
完備されていません。
日本の経済学者が中国を分析するとき、GDPや外貨保有高に目を奪われて、
肝心な社会ソフトを見落としています。
(日本経済の強さを書くつもりがまた中国の事になってしまいました。次回は
日本経済についてあらためてもう一度書いてみます。)
