新聞を見ていた妻が私に説明を求めた。「過去最大の貿易赤字で日本の円安
政策に懸念」という日経新聞の記事を見て不安そうに尋ねた。
「貿易赤字が6兆9300億円だが、海外からの配当金、利子、特許料などが
10兆円もあります。つまり経常収支はプラスです」と安心させるために答え
ましたが、そもそも「貿易の黒字は利益で赤字は損失だ」といった見方は、
経済学にとって初歩的な誤りです。
多くの人々はメディアの記事を見て、私の妻と同じように不安を感じたと
思われます。そこで今日は経済の話をしたいと思います。
昔は「冨とは、金(貨幣)であり、国力の増大とはそれらの蓄積である」
つまり「貿易黒字が国力」という思考は「重商主義の誤謬」としてとっくの
昔に多くの経済学者によって否定されています。
例えばカナダ、オーストラリア、デンマーク、スエーデン、その他の先進国
などは貿易赤字だけでなく経常収支まで数十年間も赤字を続けていますが、
それらの国が破綻したなど聞いたことがありません。
それなのに貿易赤字がわずか2年続いただけの日本を見て「日本貿易赤字に
転落、日本破綻へのカウントダウンが始まった」などとほざく愚かな経済学
者や評論家は早く退場してください。
先日テレビを見ていましたらある著名な経済学者が「今後日本の経常収支が
赤字に転落して、赤字国債を国内貯蓄でまかなえなくなって、金利上昇が
起こり国債が暴落する」などとしたり顔で言っているのを見て心底呆れ果て
ました。
私は経済学者ではありませんが、経済学の最初に教わることは「合成の誤謬」
という言葉です。すなわち。部分的に真であることが、それ故に全体として
も真であるという誤った推論をしてはいけないということです。
日本の多くの経済学者や財務省まで「合成の誤謬」に取り込まれています。
つまり経済について多くの人びとの混乱の原因は個人の財布と政府の財布を
一緒くたに考えているからです。「国の借金1000兆円」という数字を聞い
て日本は「お先真っ暗」と多くの人々は思っていると思います。
しかし政府債務は国民の間で保有されている証券類から成り立っています。
つまり国の借金とは、政府の国民からの借金であり、国民にとってみれば
資産です。
これだけの説明では理解できないと思います。そこで明治維新にかえって
考えてみます。明治政府が出来るまではそれぞれの藩が藩札を刷っていま
した。明治政府は日本統一と同時に藩札を買い上げて統一した通貨を支給
しました。
その後経済が膨れていくにつれてお札をどんどん刷っていましたが、欧米の
システムを見習って中央銀行を作ってお札の印刷は日本銀行に任せることに
なり、政府の支出は国民の税金で賄うことになりました。
ところが経済の規模が膨れ、社会保障費が膨れるに連れて国民の税金だけで
は足りなくなってきました。日本銀行がまだ設置されていない時代では足り
ない紙幣は政府が勝手に刷る事ができましたが、インフレを防ぐために国債
を銀行や保険会社、個人に買ってもらって、足らないお金を補充しました。
それでも足らない場合は日本銀行に国債を発行してお金を手に入れました。
これらの国債の大部分は日本国民によって保持されています。ということは
国民が債務者であると同時に債権者でもあります。つまり国の1000兆円の
借金は自分が自分によって借りている債務です。
この単純な事が理解できない最大の原因は「国」を「政府」のことだと解釈
しているからです。政府の借金を国の借金とみなすからです。
国の借金とは政府の国民からの借金であり、国民にとってみれば資産です。
借金が必然的に全て悪だということは、絶対にありません。ビジネスでは冨
を増やすために新しい工場や設備に投資するために銀行から借り、そして
政府もインフラの整備や防衛のための軍事費、社会保障費など税金だけでは
足りなくなれば借金します。
もちろん借り手があれば、貸しても無ければならない。もしも負債が借り手
にとってマイナスと考えられるのであれば、貸し手にとってはそれはプラス
と見なされるべきです。貸し手とは経済の民間部門を構成する銀行や保険会
社、個人の正味資産です。
だから外国人を相手とする貸借がなければ、借りの合計と貸しの合計とは
明らかに同額となる、すなわち正味負債はゼロとなります。
「日本は世界最大の借金国」というしばしば繰り返される非難はとんでも
ない間違いです。もし日本政府が外国から借金しているならわかりますが
94%まで国内での債務です。その証拠に日本国債の金利はわずか0,8%です。
日本メディアは、基本的事実を伝える能力に欠けています。知識が無いと
いうより何らかの邪悪な政治的な意図があるように感じられます。
経済的要因に左右される今日の政治的現実は経済発展が最重要課題でありま
すが、経済の説明も難しい事はよくわかりますが、しかしあまりにもミス
リード、捏造のオンパレードでは疑いたくもなります。
日本の経済紙は過去、まるで日本経済を悲惨な緊急状態に陥っているかの
ように日本経済の弱さを誇張する報道をしてきました。しかし安倍政権に
よって日本経済に明るさが見えてくると、とたんに社説の宗旨替えをする
など学識も見識も疑ってしまいます。
日本経済紙は過去日本経済の現状を正確に伝えてこなかったために、外国
の報道機関は日本経済について常にマイナスイメージで見て来ました。
その結果西側の報道機関や経済学者たちは日本の現実に立脚した調査・研究
をせずに日本メディアの影響を受けたまま自分たちの先入観で日本経済を
批評してきました。お陰で日本に関する誤った報道が世界中に蔓延したの
です。
日本は世界最大の債権国を確保しているし、その上莫大な国内貯蓄があり
ます。だから債券市場の金利も非常に低いのです。しかし日本メディアの
影響を受けた外人は日本の財政に対してとても大きな危惧を抱いています。
アメリカは日本メディアの愚かな報道を真に受けて、日本の実力を過小評価
して、日本は中国を差し置いてリーダーになる可能性はないと判断して中国
重視の政策を長く続けて来ました。
しかしアメリカも日本の工業力や日本が世界にもたらした経済的影響力に
やっと気が付き始めました。
中国がアジアの主要大国として浮かび上がってきているという見方は、
巨大国土面積と人口のせいです。そしてアメリカは捏造された中国GDPに
惑わされて、やがて中国も近代化されて民主国家になっていくというロマン
チックな希望的観測を長く持ち続けていました。
それは過去大勢のアメリカ人宣教師が、中国の大衆を開放する夢を抱いて
太平洋をわたりました。彼らのアメリカ・中国関係についてのロマンチック
な考えにアメリカ人は触発されました。
戦後アメリカの大企業が宣教師と同じように、再び中国の文明化に手を差し
のべるという夢を膨らませて中国に進出しました。なにも労働工賃が安いと
いうだけではありません。工賃が安いだけなら南米に行っても同じです。
しかし今日に至るまでアメリカ企業による中国進出は、大部分が中国側に
有利に運んでいます。信じられないでしょうが「中国との取引から利益を
得られそうな企業は、アメリカにはほとんどない」とカレル・ウオルフレン
がインターナショナル・ヘラルド・トリビューンに寄稿しています。
彼は、「世界経済の地平線の彼方を眺めると、大きな存在として浮かび
上がってくるのは中国でなく、それは日本である。中国が日本に取って代わ
ると考えているアメリカ人や一部のヨーロッパ人は、正直に言えば愚かと
いうより他ない」と断言しています。
日本を覆っていた民主党の黒雲が追い払われ,今後安倍政権が日本を変えて
いきます。
これからの世界は、各種先端技術を制する、強すぎる日本に世界各国は
蒼ざめるしかないのです。
(今日は長くなってしまって申し訳ありません。最後まで読んでいただいて
ありがとうございました。)
